2017/08/04

おばあちゃんの伝言

薪ストーブでトウモロコシを茹でていたら、屋根と煙突の隙間部分がパチパチと発火、すぐに消火して、充分に水をかけたつもりだったけど、種火が残っていたみたいで、寝ているあいだに、じわじわと燃え広がってしまった。

煙突周りに隙間は開けていて、いままでなんともなかったのに、なんで急にこんなことになったのかとか、あれだけ水をかけたのに、なんで種火が残っていたのかとか、ちょっと不思議に思っていたところに、昔この家に住んでいた、おばあちゃんの訃報が届いた。

すぐにああ、おばあちゃんが来たんだなと思った。大丈夫に見えても、この部分は危ないよと、火事が心配になって、向こうに行く前に、ここに立ち寄って、教えてくれたんだと思った。その日のうちに煙突周りの木を切って補強し、熱を持つ煙突周りは、耐火ボードを使うように段取りをした。

おばあちゃんとは、ここに住みはじめた当初は、ずいぶん仲良くさせてもらって、一緒に散歩したり、ほんとうのおばあちゃんのように思っていた。でも一年くらい前から僕の顔を見ても、誰かわからなくなって、それからほとんど外に出なくなって、会えなくなってしまった。

異なる事象を、根拠もなくこじつけていると、周りが見えなくなり、自分を見失う危険性があるのかもしれない。それでも僕は、焼け焦げて穴の開いたこの屋根裏を見ると、申し訳ない気持ちで、おばあちゃんを思い出す。あの細い腕や、苦労した若い頃の話、曲がった背中。そういう記憶が、宇宙の穴から溢れだす。

世界は不思議に満ちていて、偶然を利用して、本人にしかわからないように、語りかけてくる存在もある。タイミングや偶然を利用してしか、コンタクトすることができないような存在が、ほんとうはいまの暮らしや安全を、支えてくれているのかもしれない。人間はなにも知らない。生きていることそのものが奇跡で、世界が不思議に満ち溢れていることも、つい忘れてしまう。

心配かけてごめんな、寄ってくれてありがとう。火のもとにはじゅうぶんに注意するから、安心して成仏してください。

 

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