2017/04/29

粉雪の森

樹々や草花には申し訳ないけど、年に数日しかないので、雪が積もると嬉しくてしかたない。雪は景色を劇的に変えてしまう。凍りつく樹々に絡みつく雪の純白が、内側に宿る霊性を引き立てている。自然は厳しいほど美しい。

家の前は谷になっているので、吹雪いてくると、一度は落ちた雪が、ふたたび風に乗って舞い上がる。ふわふわと落ちる雪と、重力に逆らう雪を同時に見ていると、見ているこちらが無重力になって、宇宙空間に微睡んでいるような夢心地になる。

雪の森を歩いていると、ときどきゴソッと砕けた粉雪が落ちてくる。淡い光に照らされて舞う粉雪は、ダイアモンドのように煌めいていて、それはただの自然現象なのだけど、全てが計算された、天上の悪戯のような、精霊の存在をすぐそばに感じて、ときめいてしまう。

なにげないことに美を感じたり、自然現象にしみじみとするのは、たぶん地球で、人間だけだと思う。なんでそういう機能が、人間に与えられたかを、自分の頭で、深く深く考えていると、やがて雪が溶けるように、自然と道が開けてくる。

 
 
 

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